凍った隠し事

寒すぎる。立春の次の日がこれて。


まだ寝てたい、まだ寝てたい、まだ寝てたい、でも娘の離乳食がというのを脳内で10セット程繰り返してから渋々起きたら、外は雪がちらついていた。どおりでと納得しつつ、冷凍庫から凍ったお粥やらしらすやらを取り出して器に移していく。離乳食が進むにつれて冷凍ストックの量も増え、冷凍庫がいつもいっぱいいっぱいだ。しかもジップロックばかり増えてどれがどれやら。絶対に効率が悪いのでなんとかしたいと思いつつ、冷凍庫の左奥をチラッと見る。


大量のジップロックの奥、冷凍うどんの下に眠る、わたしの秘密。


オハヨー ブリュレ チョコレート味。

夫には内緒で、自分にだけ買ったアイス。



先日、娘の散歩がてら寄ったドラストで、気になるアイスを発見した。それがオハヨーのブリュレ、チョコレート味である。美味しそう、買っちゃおうかな〜と思う一方、夫の分もないとかわいそうかなと迷いが生じる。たいていこういう時は、夫にも何か買っていく。けれど今、自宅の冷凍庫には雪見だいふく信玄餅味が入っているのだ。夫と1つずつ食べようと言いつつ、お互いのアイス欲のタイミングが合わずにまだ食べていない。ここでまた2人分アイスを買うのは憚られる。なんといってもうちの冷凍庫は今、そんなに寛大ではない。


悩んだ末に、たまには自分の分だけでいいか、と結論づける。これはわたしのメンタル危機の時のお守り。1日赤子といてしんどい時は、そりゃまあ、ある。ので、今度そんな時が来たらこのアイスを食べよう。そのかわり、その日は寝るまでご機嫌でいよう。そうしてわたしは件のアイスを買い求めて帰途に着いた。



夫が冷凍庫を開けることはほぼないけれど、念のため奥深く、冷凍うどん5個入りの下にブリュレを押し込んでから早3日。すぐ食べちゃうんだろうな、と思っていたら、意外にもそのタイミングが訪れないまま週末がやってきた。3日の間にしんどい時がなかったわけではないが、しんどさを抜けた先に娘が寝て、わたしは空腹かつ夕食まではまだ時間があり、夫は不在、というタイミングがなかった。もっと気軽に食べればいいのに、自分なりのベストタイミングを狙うあまりに食べられていない。ずっと忘れずにいるのに。食べたいと思っているのに。アイスを買ってからというもの、日中はそのことが気になって、なんだかソワソワしてしている。ただのアイスなら、冷凍庫を開けるまでは忘れているのに、秘密にしただけでこんなに忘れられない。わたし、殺人とかしちゃったら、絶対現場に戻ってくるタイプだろうな。


夫は、わたしが自分の分だけアイスを買ったからといってとやかく言ったりしない。むしろ、いいじゃん、いいの買えて良かったね、と言ってくれるだろう。なんていい人なんだろう。だからわたしもいい人でありたい。自分の分だけアイスを買っちゃうような人間だと思われたくない。恥ずかしい。バツが悪い。バツが悪いなんて言葉初めて使ったな。ああ今お風呂上がりで、アイスにはちょうどいいコンディション。夫の分もあれば、アイス食べる?って聞けるのに。でも今日は寒かったから、今はいいや、って言われちゃうかも。



これを書くことにして、「ブリュレ」だか「ブリュレー」だかわからずにブランドサイトを確認したら、正しい食べ方が載っていて、食べる15分前に冷蔵庫に移すらしい。これで食べるタイミングに、「娘が寝て、それが少なくとも15分以上継続しそうである」という項目が増えた。秘密のアイスへの道は、険しく遠い。