お伽話の王女でも

大学生の時、アメリカからの留学生との交流会に出たことがある。「日本に来てカルチャーショックを受けたことはある?」と拙い英語で聞いたわたしに、留学生の一人が「バスキンロビンズが、サーティワンと呼ばれていること」と答えた。このことをわたしは何となく忘れられず、以来サーティワンの前を通ると、確かにbaskin robbinsて書いてあるな、と毎回律儀に思っている。

 

あれから干支が一周し、わたしは31歳になろうとしている。

 

一年前の誕生日は「祝生誕30周年!大台突破記念、やんややんや」という気持ちの盛り上がりがあった。ので自分へのプレゼントと称して35,000円もする骨格パーソナルカラー診断を受けたし、その圧を感じ取った夫も、例年より奮発したプレゼントをくれた。今年はそんな盛り上がりはなく、粛々と当日を迎えようとしている。プレゼントも、リクエストしてと言われているけど、これといって思い浮かばないままでいる。というか冷静になったら骨格云々に35,000円は高すぎる。

 

ただ一つ、去年からずっと心に秘めていた計画があって、それが誕生日当日にサーティワンのアイスケーキを食べることだ。31歳になるから、サーティワン

 

思いついた時は「なんていいこと考えついたんだろう、天才か?」と思った。わたしは大概、自分に甘い。その計画を友だちに話したら「アラサーは胃腸も弱ってくるから気をつけてね」と言われて「夢も希望もないな」と思った。しかしこれはかなり的を射た忠告であり、現にわたしは昨年友だちの結婚式で供されたいいお肉を食べて、もうテキメンにお腹を壊した。こんな人間がアイスケーキだなんて、夢や希望以前に適性がない。

 

それでもずっと前から食べてみたくて、という熱い気持ちもない。思いついてから検索して、へーこんなに種類あるんだ、と驚いたぐらいだ。その上、ピカチュウの中身、ポッピングシャワーだけ?もっと選べればいいのに〜とかのたまっているんだから始末の悪い客である。加えてわたしは自他共に認める「アイスを食べるのがビビるほど遅い人間」なので、その点でも適性がない。友だちとアイスを食べていて「その味、好きじゃなかった?」と聞かれたことが複数回ありますか?アイスを食べるのがビビるほど遅いってのは、そういうことだ。

 

だからこそ、今年しかない!

31歳になる誕生日、サーティワンのアイスケーキを食べるのにこれ以上うってつけの日があるだろうか?いや、ない。胃腸だって、どんどん弱くなる一方だ。今年食べなければ、もう一生食べないに決まっている。「31歳だからサーティワンアイス食べる」って周りに言った時にちょっとウケる、この動機づけがなければアイスケーキなんて絶対に食べない。善は急げ、今日が一番若い日だ。わたしには太田胃酸がついてる。共に乳脂肪と闘おう。

 

そう決意して夫にアイスケーキを注文してもらい、今はワクワクしながら当日を待っている。なんでも日本上陸50周年を記念して、中に入っているトッピングが50%増しになっているらしい。ラブポーションサーティーワンのハート型チョコが1.5倍は魅力的だが、ポッピングシャワーのポッピング部分が1.5倍?それは美味しいを通り越して、おもしろくなっちゃうのでは?