煮えたぎるような

真夏のピークが、去った。

遅すぎ

と言う他ない。もうこっちは虫の息です。

去年、愛知に引っ越してきて最初の夏、息をすれば気道から肺までを火傷しそうな暑さに私と夫はなす術もなく呆然とした。玄関を開けた途端に「死」がチラつく暑さ。フェーン現象ヒートアイランド現象の悪魔合体が原因らしい。そう知見を得て2度目の夏、暑さへの覚悟はできていた。子のためにアイスリングも買った。だけど夏がこんなに長いって、長いってどういうこった。

 

暑さでわたしの堪忍袋の緒も焼き切れてしまったらしい。この終わらない暑さに対してわたしは極めて短気になっていて、9月後半に入ってからはこの「暑さ」を相手にほとんど毎日キレていた。先月の22日、朝グーグルホームに天気を聞いたら「今日の天気は最高気温32度、晴れです」と言われて、はっきりと舌打ちをしてしまった。それに自分でもびっくりして、だから日付を覚えている。なんなら「クソがよ!!!」ぐらいは言いたかったけど言い慣れていないので咄嗟に口から出てこなかった。言語習得真っ盛りの2歳児と暮らす身としては、それぐらいでちょうどいい。それでなくても子は最近、口にしたものが予想より熱いと「激アツみたい」と言うようになってしまって、これだけで言葉遣いが悪い!とはならないけど、なんとなく「オォ」とは思う。

 

9月は、遠方の友だちが仕事ついでに会いに来たり、家族旅行をしたり、子を夫に任せて友だちと飲みに行った(ら、そのお店がまあ雰囲気もよくご飯もお酒も美味しくなぜかそこで撮ってもらった自分の写真も爆盛れて最高の一夜だった)り、楽しく充実した1カ月だった。だけど思い出そうとすると、全ての思い出は陽炎の向こう。誰と何を話したか?「あ゛つ゛い゛」とばかり言っていた気がする。

先週も、30度超えの日にスーパーの白菜売り場で「鍋、クリーム煮なんてどうですか?」と書かれたポップを見つけて「殺す気かよ」と憤慨したり(白菜は買った)、児童館の先生が知らない誰かに「来週から涼しくなるみたいですよ」と言うのを聞いて「当たり前だろうが、10月だぞ」と脳内で突っ込んだり。こうして書いてみると、自分から体感温度を上げている感じがしてお恥ずかしい限り。でも、私が怒ってるのはスーパーの青果担当者でも児童館の先生でもなく「暑さ」に対してであることはご理解いただきたい。そっちの方がやばいかもしれないけど。とにかく日増しに暑さへの憎悪を募らせていた。春は変質者が増えると言うけど、夏は「キレる人」が増えたりしてるんじゃないか。私も実質、その一員のような気がする。

だから10月に入った途端にこんなに涼しくて、ちょっと信じられない。騙されないぞという気持ちだけど、これでまた30度を超えるようならこの土地にはもう住めない。誰も。県ごと更地に戻してバナナでも栽培しよう。

 

そして今週、やっと夏物衣料を洗濯して、衣替えをしようとしたら秋にふさわしい服が全然なくて愕然とした。去年も愕然とした覚えがあるし、多分来年も愕然とするのだろう。気候でさえこうして変動しているのに、わたしときたら、不動すぎる。いっそ清々しい。秋の空みたいに?なんて思ってグーグルホームに明日の天気を聞いたら「明日の天気は最高気温24度、雨のち曇りです」と言われた。どんよりしてんのかい。