白菜を漉す

離乳食というのは、とにかく何でもかんでも裏ごしから始まる。人参かぼちゃブロッコリー、ほうれん草にしらすに豆腐。おかゆだってただでさえ10倍がゆ、ほとんど水分のうす〜いおかゆなのに、それを更に裏ごしして与える。おまけにお粥は炊飯器で炊くと必要量の4倍近くできてしまうので、わたしは週3で昼食にうす〜いお粥を食べている。これも離乳食期の乳児母あるあるだと思う。


で、昨日は生まれて初めて白菜を裏ごした。

娘が生まれて初めて、ではなく、わたしが生まれて初めてだ。同じことか。

夜中の授乳後に娘がやや覚醒し、全てを終えて寝られるタイミングが朝5時半を回ってしまった。もう1時間も寝られん悲し、と思ってそのまま起床し、せっかく時間があるから新しい食材にチャレンジだ、と野菜室を開けたら、イケそうなのは白菜しかなかった。きのこ類はだめ、長ネギはあまりにも大変そう、春菊もなんか、赤子はあんまり好きじゃなさそうよね

そうして選ばれた白菜も、赤子が食べられるのは緑の部分、しかも内側の方だけだという。希少部位だ。白菜のシャトーブリアンだ。大人だって芯ばっかりじゃ嫌だぞ。でも仕方ない。


それを蒸し煮にしていざ裏ごし。くたくたになった白菜は、意外とすんなり正体をなくしてすり潰され、漉し器の裏から黄色の雫が落ちて、あー白菜って本来はこんな色なのかー、と思った。本来というか、「白菜を一色で表せ」と言われた時に使う色?いつだそれは。



家の中で唯一の明かりが灯るキッチンで、黙々と白菜を裏ごす。


白菜を裏ごす日が来るなんてなあ

想像もしてなかったよ。そりゃそうなんだけど。誰もしてないだろうけど。こんな葉っぱの野菜も裏ごしできるんだ。この発見をブログに書こうかな。白菜を裏ごしたことはありますか?でアンケート取りたい。嘘そこまでじゃない。白菜を裏ごしするという行為が自分の身に起こると想像したことはありますか?そっちのが聞きたい。


7:30になるとアラームがわりのラジオがつくけど、それまでは静かな静かな部屋。

スプーンの背で、白菜を裏ごし器に押し付ける。



それとも今日、もっと絶対的に書きたい何かが起こるかな。夫が誕生日だから、ケーキを買いに行くつもりだけど。外あったかいといいな。誕生日メッセージをラジオに送ったけど、読まれるかな。読まれなかったら手紙を書いて、ケーキ食べる時に渡そう。



黙々と。

白菜を。



これが終わったらお弁当に取り掛からないといけない。卵とえのきベーコンを焼いてこんにゃくの煮物をあっためて。緑がない。ブロッコリーかほうれん草がほしい。妊娠前までこんなこと気にしなかったのに。野菜不足が気になる。妊娠してから、どんどん自分が「ちゃんとしていく」。嫌だな。苦しくないの?



静かで薄暗いキッチン。



卵にネギ入れて緑を足そう。あとご飯にわかめふりかけをかけよう。わかめって緑にカウントされるか?やっと明るくなってきた。7:30になったら夫を起こして、朝ご飯だ。白菜はもう、こんなもんだろ。



そうしてできた黄色の半液体を数時間後、娘は特に抵抗もなくペロリと食べた。

芯ばっかり残った白菜も、申し訳程度のベーコンを入れてミルクスープにしたら、めでたく32歳を迎えた夫が美味しいと言ってくれた。


わたしはそれが嬉しくて、にっこりした。