先日スーパーに買い出しに行ったら、お正月商戦の売れ残りであろうカニが全品半額になっており、そういうことならと3000円になっていた茹でズワイガニを買ってきて食べた。ものすごく、ものすごく久しぶりのカニだった。殻付きのカニなんて結婚してから一度も食べていないし、カニ缶を含めても一年以上は食べていないと思う。いや去年大根サラダにして食べた…?と思ったけど、あれはホタテ缶だった。
その久しぶりのカニを食べながら、美味しいなあと思いつつもわたしは、「カニが世間でこんなに尊ばれる理由、やはり全然わからぬ」という感慨を新たにしていた。
とにかく気合いの入っためんどくさがり屋なので、カニを食べる時は美味しさよりもその食べにくさに対するマイナスが勝つ。まず痛い。安心して掴めるとこ、ない。それを食べるには力で割るしかないって、原子時代か?
その殻を突破しても、食べやすいのはthe脚の部分、それが綺麗に外れた場合のみ。で残りの甲羅の裏部分とかはもうカニの身体の仕組みそのもの!なので可食部がどこやらわからず、箸でつついても消しカスみたいなのがチミチミ取れるばかりで、労力に見合った成果が全く得られない。
肝心の味は…美味しいよ、美味しいと思う。でも同じくらい美味しいものは、現代にはたくさんある。原子時代だったらそうじゃないかもしれないけど。
それなのに、カニは尊ばれている。
食べにくいという理由では手羽先も長年好きになれなかったが、あれは安いので許せるし、そんなにでかい顔もしていない。肉売り場の一区画を借りて「こんなのもあります…食べにくいんですけどね、よかったら」みたいな。しかも下茹ですると結構綺麗に外せることをこの冬知った。
けどカニは!!!!鮮魚コーナーの一等地をまるまる占有して、ポップもいっぱい立ててもらっちゃって、店内放送でも「カニが!カニが!!」とお祭り騒ぎ。ひゃー、と思って見たら1万円とかする。謙虚さが、なさすぎる。
今回は半額だったけど、それでも3000円、定価なら6000円。驚くべきことに、これは同売り場の最安値で、まだ上に3段階ぐらいあった。そして一番高いものは半額でも8000円ぐらいしていた。1万円近くも払った挙句に手をズタズタのシャビシャビにしながら食事をしたい人が、そんなに!しかも年末年始とか、特別な日、ハレの日に!いるというのが本当に信じられない。「カニ食べると無言になるよね〜w」みたいなのも全然美徳じゃない。そんな日ぐらい、同じ食卓を囲む人とは楽しくお喋りしたいよ。なんならその無言、不機嫌由来じゃない?それに1万円払ったらちょっといいコース料理も食べられるし、居酒屋だったら豪遊できる。
のにみんな、そんなに手を痛めつけて汚して沈黙してまで、カニが…?
…と長らく思っていたし、今回改めてそう思った。なんなら食材としてはカニカマの方が優れているまである。あれ10本入って98円とかだし。
それでもわたしは社会性があるので、それを美味い美味いと食べている夫の前では言わなかった。そんなに美味しいなら、買ってよかった。でも自分の分のカニの体内をほじくるのはすぐに嫌になって、食べにくい部分は翌日まとめてカニ汁にした。カニ汁なら子も飲んでみて、カニアレルギーがないか確認できるし〜、と軽い気持ちで作ったところ、これが感動するほど美味しかった。このためだったら1万円も惜しくな…それはない。でも宝くじで10億当たったら、一回ぐらいはカニを丸ごと買って、身は一切食べずに出汁の素として使用するかもしれない。